初めまして
今回は『ジュラシックワールド』について解説していきたいと思います
この映画はこれまでの『ジュラシックパーク シリーズ』のオマージュが非常に多い作品なのですが、どれほど細かいオマージュが散りばめられているのかや、それらをどのように演出やストーリーに落とし込んでいるのかについて解説していきたいと思います
以下ネタバレありです
これまでのシリーズのハイブリット

『ジュラシックパーク』は初めてCGで生物を描いた映画であり、公開当時映像表現に革新をもたらしたと言われています、しかしこの作品以降どんなにすごいシーンを見せられても観客はCGだと分かっているから驚けなくなってしまいました
この映画では「今どき恐竜で驚く人はいません」というセリフがありますが、これは今の時代CGの恐竜をみて驚く人はいない事のメタファーとなっています
そして普通の恐竜では驚かなくなったので遺伝子操作で新種の恐竜を作るのですが、この新種の恐竜「インドミナスレックス」は様々な恐竜や生物の遺伝子をハイブリットさせて作られています
これはいろんなところで言われていますが、この映画は過去の『ジュラシックパークシリーズ』や様々な作品をオマージュした作品となっています
つまりインドミナスレックスはハイブリットされた恐竜であり、なおかつこの映画もいろんな作品のハイブリット映画であるという構造になっています
オマージュの一覧
この映画のオマージュを簡単に一覧でまとめてみました
『ジュラシックパーク』
- 二人の兄弟がパークを回る
- 隠れてたおじさんが恐竜に見つかって一口で食われる
- 乗り物に乗っている兄弟が乗り物ごと恐竜に襲われる
- アニマトロニクスで表現された弱った恐竜に触れる事で命の尊さを感じる
- 三匹のラプトルに囲まれそこに大型肉食恐竜が現れる
- ティラノサウルスを発煙筒で誘導
『ロストワールド/ジュラシックパーク』
- 夜の草むらでラプトルに襲われる
- ジープやバイクに乗って恐竜狩りをする
『ジュラシックパーク3』
- 森から大型肉食恐竜が飛び出して草原を追いかけてくる
- 海岸に軍隊が到着する
- 恐竜のいる森で大声を出して注意される
- 恐竜同士のバトル
- 監督のジョン・ジョンストンが企画して没案になった『ジュラシックパーク4』の恐竜を軍事利用する展開
原作『ジュラシックパークシリーズ』
- 遺伝子操作で体の色を変化させて擬態する能力を持った恐竜が登場する
その他の作品
- モササウルスが翼竜ごと人を食うシーンはディズニー作品の『ファンタジア』のオマージュ
- 恐竜狩りのシーンは元々ハワードホークス監督の『ハタリ!』のオマージュ
まとめてみると分かるように特に一作目のオマージュ要素が多く、この映画は続編映画であると共にリメイク作品でもあると言えると思います
またこの作品におけるオマージュはこれだけでなく脚本にも見られます
プロットについて
『ジュラシックワールド』の主人公はクリス・プラット演じるオーウェンですが、脚本上の主人公は彼ではなくブライス・ダラス・ハワード演じるクレアです、なぜならストーリーの中で明確に成長しているのはオーウェンではなくクレアの方だからです
クレアの成長物語を簡単に説明すると、彼女が母親の資格を得るまでの物語です
クレアの成長物語

物語の序盤のクレアは生命や家族を大切にできない性格で母親としての資格がないキャラクターとして描かれています
彼女はビジネスの事しか頭になく恐竜の事を展示物としか見ていません、本作では何度か恐竜のホログラムが登場しますが、彼女はホログラムをよけずに通り抜けており、恐竜達に敬意を払っていない事が示されています
また甥っ子たちにもあまり関心がなく、年齢を覚えていなかったり、甥っ子に抱き着かれてもあまり嬉しそうではありません
しかしインドミナスレックスが脱走してしまい、その後甥っ子たちの行方も分からなくなってしまった事で、彼らを救出しに行かざる負えなくなります
そしてその道中でインドミナスレックスに殺された恐竜の死に直に触れて感じた事で彼女の心に変化が訪れます
このシーンの直後彼女は甥っ子たちの痕跡を見つけると必死に名前を叫んで探します、さらに甥っ子たちと再会を果たすと先ほどは抱き着かれても嬉しくなさそうだったのに今度は自分から抱きしめて心配していたことを伝えます
このようにクレアの物語は愛情のない人物が成長し、母親の資格を得られたところまでを描いています
なぜ母親の物語なのか

実は『ジュラシックワールド』で母親の物語を描いているのには理由があります、それは一作目の『ジュラシックパーク』で父親の物語を描いているからです
『ジュラシックパーク』では子供嫌いで大人げないグラント博士が、子供たちを守らざる負えない状況になった事で成長し、父親の資格を得るまでの物語を描いています
それに対して『ジュラシックワールド』ではクレアが母親の資格を得るまでの物語となっています、ですのでこの作品は脚本部分でも初代をオマージュしている事になります
ちなみに『ジュラシックパーク』の脚本については別の記事で詳しく解説しているので、興味がある方はこちらをご覧ください
>>映画「ジュラシックパーク」ネタバレ解説 この映画でスピルバーグはどう成長したのか
演出について
この映画は演出にも見どころが多い作品となっています、全て紹介する事はできませんがいくつか見どころを解説したいと思います
恐竜のフィギュア

作中ほぼずっとコントロールルームにいるジェイク・ジョンソン演じるロウリー、彼のワークスペースには恐竜のフィギュアが並べられていますが、実はワークスペースの状態が現実の状況とリンクしています
最初に彼が登場した時にクレアにワークスペースをかたずけるよう言われますが、それに対して絶妙なバランスで崩壊を免れていると言い返します、これは今後パークの秩序が崩壊いていく伏線になっています
その後インドミナスレックスが脱走し捕獲作戦も失敗してしまったのでオーウェンはインドミナスレックスの射殺を提案しますが却下されます、怒ったオーウェンは全然関係ないロウリーのフィギュアに八つ当たりします
この場面はただのギャグシーンというだけでなく、ついにパークの秩序が崩壊し大変な事態におちいった事も表現しています
最後にクライマックス、ここではロウリーがブロントサウルスのフィギュアを持って帰るシーンが登場します、ブロントサウルスは恐竜映画の元祖とも呼べる『ロストワールド』(1925年)で人間がロンドンに持ち帰った恐竜です
つまりこのシーンは登場人物たちが恐竜の島から出ていき、元居た人間の世界に帰る事を表しています
またラストシーンでコントロールルームのヘリポートの上にティラノサウルスが現れ咆哮をあげますが、これはこの島の支配者が再び恐竜に戻った事を強調しているシーンです
終わりに
今回は『ジュラシックワールド』について解説しました
この『ジュラシックワールド』はアカデミー賞の受賞こそありませんでしたが、興行収入では16億ドル以上を記録し現時点ではシリーズ最大のヒット作となっています
この映画がここまでヒットした要因の一つとして、コンセプトがはっきりしていたことが挙げられるかと思います
これまでのジュラシックパークのハイブリット映画という明確な矢印を決めて、それを様々なオマージュやキャラクターや脚本にまで落とし込む事ができた事が良かったのかなと思います
逆に本作と同じくコリン・トレヴォロウが監督したシリーズ三作目『ジュラシックワールド/新たなる支配者』は、このコンセプトのところがぼやけてしまっているのが評価が低い原因かなとも感じました
最後まで記事を読んでいただいてありがとうございます
よければ別の記事も読んで頂けると嬉しいです
それではまた
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