アバター:ウェイ・オブ・ウォーター 感想&考察 テーマを深掘りしていくと見えてくる監督の本音

SF映画

アバター最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の公開を記念して『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が1週間限定で3Dスクリーンにてリバイバル上映されました。

実は二作目はまだ見てなかったのでこの機会に観賞してきました、なので感想や考察を書いていきたいと思います。

※この記事の内容はあくまで私個人の意見です、またネタバレありとなっていますのでご了承ください。

監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン、リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルタナ、スティーブン・ラング 他
公開:2022年
上映時間:192分

あらすじ

元海兵隊員のジェイクは妻のネイティリとの間に4人の子供をもうけ幸せに暮らしていた。しかし再び人類がパンドラに現れた事でジェイク一家は森を追われる羽目になり海の部族のもとに身を寄せる事になる。だがそこにも侵略の手が迫っていた。

アバターシリーズでは毎回、惑星パンドラの原住民のナヴィが住んでる土地を人間が侵略しますが、これはかつてヨーロッパの白人達が他の大陸や土地の原住民族を侵略した現実の歴史を元にしていると考えられます。

一作目のストーリーはアメリカ大陸にヨーロッパ系白人が移住した時代の歴史をなぞらえているのでしょう、なので一作目で登場するオマティカヤ族アメリカの先住民のネイティブ・アメリカンがモデルだと思われます。

そして今作に登場するメトカイナ族はおそらくニュージーランドの先住民であるマオリ族がモデルと考えられます、なぜならメトカイナ族はマオリ族の様に海の民であり、タトゥーを入れる文化も共通しています。そしてマオリ族はかつてイギリスに植民地化されているのでネイティブ・アメリカン同様白人に自分たちの土地を奪われた歴史があります。

要はアバターシリーズは白人の侵略の歴史宇宙開拓の話に置き換えて批判的に描いている作品であると言えるでしょう。

アバターは現在5作目まで制作が予定されていますのでおそらく残りの3作も白人に侵略された歴史のある民族がモデルのいろいろなナヴィが登場すると思われます、なぜならそのような歴史がある民族は世界中にたくさんいますからね。

しかし仮に『アバター』が白人批判を描いているのだとしたらこの作品は大きな矛盾を抱えている事になります、なぜならこの映画は白人酋長ものであるからです。

白人酋長ものとは簡単に説明すると白人の救世主(主に男性)が非白人の民族の人々を窮地から救うという内容の作品の事です。

つまり侵略してきた白人達に対抗するために、原住民族をまとめる英雄もこれまた白人という、白人を非難しながら同時に白人の英雄を称える物語でもあるという矛盾した構造になってしまっています。

そしてその構造は続編の今作でも引き継がれています、今作で新たに登場した救世主的なポジションのキャラクターにシガーニー・ウィーバー演じるキリがいますが、キリもまたグレイス博士のアバターから生まれているためやはり白人文化の中から生まれたキャラクターであり依然として白人酋長ものである事に変わりありません。

『アバター』では白人による侵略行為を批判していましたがそれと同時にもう一つ環境破壊への批判も描かれていました。そして今回舞台が海になった事もあり前作にはなかった捕鯨文化に対する批判の描写がありました。

今作ではクジラにそっくりなトゥルクンという生物が登場します。この生き物は非常に知能が高く、驚くべきことにナヴィ達と普通に会話もできます。

映画ではこのトゥルクンの体内にある抗老化物質アムリタを求める人間達に狩猟されるシーンがありますが、そのシーンでは使用される捕鯨船に取り付けられた銛発射機などに漢字で「日浦」と書かれていたり、アジア人のキャストが登場していたりと明らかに日本の捕鯨文化を批判するような内容が描かれています。

公開当時はやはりこの捕鯨批判描写が日本の観客の間で物議を醸していたようです。これらのシーンに対する反感が多い理由はいろいろあると思いますが、一つはこの作品が少なからず差別意識を感じさせる部分があるからではないかなと感じます。

先ほども説明した通り『アバター』は白人の侵略の歴史を批判してはいますが作品そのものは白人酋長ものなのでナヴィの部族を指揮したり重要な役割を担うのは白人にルーツを持つキャラクターばかり、にもかかわらず日本の捕鯨文化は一方的に批判して終わり。

このような描写には表面的には人種差別を批判している様に見えても、根っこでは非白人を下に見ているという本音が出ているじゃないかなとも感じました。

しかし作品に監督の思想が強く表れた方が作品は面白くなりやすいよなとか、そもそも誰も不快にならない映画なんてほとんどないんじゃないかとか考えると、やはりいろいろ考慮してバランスのいい映画を作るのは難しいなと感じました。

今回は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の感想や解説を書きました。

アバターシリーズは3D表現を生かした映像美やストーリーがありきたりである事などについて語られることが多いと感じたため、あえてそこにはあまり触れず主に作品のテーマについて解説していきました。

このシリーズは今後公開される続編も含めてストーリーの先の展開が読みやすい分シリーズ全体を通しての構造やテーマを深堀してみても面白いかなとも思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

それではまた。

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