『トレーニング デイ』カタツムリのジョークの意味について考察(ネタバレ有り)

スリラー映画

映画『トレーニング デイ』ではスコット・グレン演じる麻薬の売人のロジャーがイーサン・ホーク演じるジェイク・ホイト巡査にカタツムリのジョークを話すシーンがありすが、このジョークはジョークになっていない上に何が言いたいのかよく分かりません。

ネットでもこのジョークの意味が分からないという意見を時おり目にします。なので今回はこのジョークの意味について考察したいと思います。以下ネタバレ有りです。

あらすじ
ロサンゼルス市警の麻薬取締課に配属となった新人刑事ジェイクは、指導教官のベテラン刑事アロンゾに「訓練日(トレーニング・デイ)」と称して車で連れ回される、しかし犯罪摘発のために躊躇なく法を犯すアロンゾの素行は悪徳警官そのものだった。戸惑うジェイクをよそに、彼の行動はどんどんエスカレートしていく。

【スタッフ】
監督:アンワン・フークワ
脚本:デビッド・エアー
【キャスト】
アロンゾ・ハリス刑事:デンゼル・ワシントン
ジェイク・ホイト巡査:イーサン・ホーク
ロジャー      :スコット・グレン

まず問題のシーンを簡単に振り返ってみましょう。

映画が始まって約20分ほどの場面、アロンゾがジェイクを連れて麻薬の売人で情報屋でもあるロジャーのもとを訪れます、しばらくアロンゾとロジャーの会話が続いた後、ロジャーがジェイクにカタツムリのジョークを話し始めます。

よく覚えていない方もいると思いますので、そのジョークを書き出してみたいと思います。

「おい、一つジョークだ。
ある男が仕事に出かけようと家を出たらポーチにカタツムリがいた、男は拾い上げ屋根の向こうの庭に放り投げた。
カタツムリは石の上で弾み、殻が粉々に砕け散って芝の上に落ちた、カタツムリはそこで死にかけた。
だが死ななかった、しばらくしてまた這い始めた。
そしてある日カタツムリは家の表へ向かいはじめた、そしてとうとう1年ほどしてそいつは這ってポーチに戻った。
そこへまた仕事に行こうと男が出てきてカタツムリを見つけた、男は眺めてこう言った、お前ふざけんじゃねーぞ。」

以上がカタツムリのジョークです。さらに会話は続きます。

このジョークを聞いたジェイクは大笑いしますが、真顔のアロンゾを見てすぐ「可笑しくない、可笑しくないよ…」と訂正します。

そのジェイクに向かってロジャーはさらに「このジョークが分かりたきゃ街に出ることだ。」と言います。

このジョークにはおそらく二つの意味があると思われます。一つ目は後のストーリーの伏線を示している事、二つ目はロジャーの現状をジョークで例えてる事です。

カタツムリのジョークの一つ目の意味はおそらくこのジョークが後のストーリーの伏線になっている事です。

このジョークのカタツムリをジェイク男をアロンゾに当てはめてみると、この二者の行動は後のストーリーにピッタリ当てはまります。

つまり男が放り投げられて殻が割れたカタツムリとは、アロンゾにギャングのアジトに置き去りにされ殺されかけたジェイクの事であり、そのアジトから生きて帰って復讐しに戻って来たジェイクはアロンゾからしたら「お前ふざけんじゃねーぞ。」と考えられるわけです。

結末の暗示

またこのジョークを聞いた二人のリアクションも彼らの結末を暗示していると考えられます。

ジェイクはジョークを聞いて大笑いしますが、おそらくそれはこの物語で最後に笑うのは彼だからでしょう。

逆にアロンゾはジョークの意味が分からず無反応です。

このジョークは自分がした事は自分に返って来るととらえる事もできます。

そしてアロンゾはさんざん人を貶める計画を立てていましたが、自分が騙した人々が復讐しに来た時の事を考えておらずそのせいで最終的に彼は破滅しています

このようにこのカタツムリのジョークは後のストーリーを暗示している伏線だと考える事もできるのです。

カタツムリのジョークの二つ目の意味はこのジョークがロジャーの現状を示している事です。これは半分妄想に近いのでご了承ください。

実はアロンゾがジェイクと一緒にロジャーの家を訪れた場面ではカタツムリのジョーク以外にも説明されない謎がもう一つあります。それは何故かロジャーのもとに何者かから何度も電話がかかって来ている事です。

正確には三回電話がかかってきますが、ロジャーが電話に出るのは二回目だけでそれ以外は着信を無視しています。

その上電話に出た時も「俺が知るか自分のケツは自分で拭け、電話すんな」と冷たくあしらっています。またロジャーはこのセリフの後に例のジョークを話し始めます。

おそらくロジャーが言うカタツムリを投げた男とはロジャー自身の事であり、カタツムリとはこの電話をかけてきている人物の事を言っているかと思われます。なぜならそう考えるとジョークの内容と辻褄が合いやすいからです。

そう考える根拠について説明しましょう。

具体的な根拠

この時の電話の相手が誰だったのかは最後まで説明がないため想像するしかありませんが、おそらく身内や仲間ではなく、麻薬の売買の取引相手か商売仲間でないかと思われます。

理由としてはまず、もし友達なら助けを求められてあんな冷たくあしらったりはしないでしょう、実際トラブルを抱えているアロンゾには自分から力を貸そうとする素振りを見せています

さらにロジャーは引退したらフィリピンに行って二度と戻ってこないと発言している事からもしかしたら家族もいない可能性があります。

また作中の描写的に情報屋として取引しているのはアロンゾだけだと思われます。なので電話の相手は麻薬関係の人物ではないかと思われるのです。

そしてロジャーはその人物を騙したり罠にはめてりして何かしらに利益を得ていた可能性十分考えられます。なぜならこの映画では悪党が誰かをだましたり罠にはめたりする描写が多いからですからです。

そのため電話の相手の人物としては話が違うと思ったか、あるいは罠にはめられたと気づきロジャーに助けを求めるが、ロジャーからしたらとろいお前が悪いんだから知らねーよ、という感じなんじゃないでしょうか。

根拠としては少し弱いかもですが、仮にそう仮定するとジョークの内容とも辻褄が合いますし、ロジャーが突然このジョークを話したくなった理由にも説明がつきます。

またそう考えるとロジャーの「このジョークが分かりたきゃ街に出ることだという発言の意味も理解できます。なぜならこの街では常に騙しあいが行われているからです。

今回は『トレーニングデイ』のカタツムリのジョークの意味についての考察をしていきました。

最後にこの映画のカメラアングルについて少し話したいと思います。

この映画には上から撮影されたシーン、いわゆるハイアングルや俯瞰ショットと呼ばれるカメラアングルが多用されています。

なぜ上からのアングルが多いのか、それは街はちゃんと悪事を見ているぞという事を画的に表現したいからだと思われます。

なぜならこの映画のクライマックスでその事が勝敗の直接の要因になっているからです、これまでずっと正しいと思った事をし続けたジェイクは生き残り、逆にこれまでずっと悪事を続けていたアロンゾは破滅してしまいます。

どんなに小さい善行も誰かが見てくれているし、どんなにバレない様にやっている悪行も誰かには知られてしまっている、だから正しい行いをしましょう。という事が監督がこの作品を通して本当に伝えたかった事なのかもしれません。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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それではまた!

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